組合毎の比較選択
組合毎の比較選択 |
中小企業の組合には各種のものがありますから、組合を作る場合にはこれらの組合のなかから、組合を設立する目的に適合したふさわしい組合を選択する必要があります。一般的には、各組合の内容を理解していれば、目的にあった組合が自ら選べるものですが、目的とする事業がどちらの組合でもできるというような場合は、選択に迷うことになります。そこで、そのような場合に、どちらを選ぶべきかについて、若干説明します。 |
事業協同組合と商工組合 |
商工組合は、出資組合にすれば事業協同組合と殆んど同じようなことができます。しかし、商工組合は、1業種1組合しか認められませんから、その業種について既に商工組合が設立されている場合は作れません。また、商工組合は広い地域を地区とし(都道府県の地域、または産地単位)、同業者の大半が加入しないと設立できませんから、少人数あるいは同志的に気心の合った者で設立しようとする場合は無理ですし、また、物的共同施設を中心とする組合や高度な密度の高い共同経済事業を行おうとする場合も、地区が広い等のことから、一般的には適しています。 そこで、一番問題になるのは、業界の改善発達・秩序維持を図ろうとするような場合です。 しかし、事業協同組合が、4人以上でも、また、異業種でも設立できるのに対し、商工組合は、1業種1組合、かつ、有資格者の2分の1の加入が必要であり、地区が広く制限されているなど、制度的に、業界の改善発達等を図るために、ふさわしい組織となっております。したがって、このような目的をもつ組合を作ろうとする場合は、制度的にみて、商工組合がふさわしいと言えます。 |
事業協同組合と企業組合 |
事業協同組合が組合員の事業の存続発展を前提としているのに対し、企業組合は組合員の事業の統合を行う点に大きな相違があるわけですが、事業の存続に拘わる問題ですから、選択に当っては、先ず組合員になろうとする者の意向が選択上の大きな要素となります。 次に、組合員の問題解決が、事業協同組合のように組合員事業の一部の共同化だけで達成できるか、あるいは統合しなければ達成できないか等の判断が、選択上の一つの基準です。 また、企業組合は、個人に加入が限られ、組合員は組合事業に従事し、共に働くという組織ですから、どちらかというと小零細事業者のための組合ですが、このようなことも選択上の基準になります。 |
事業協同組合と協業組合 |
事業協同組合が組合員事業の存続を前提とし、協業組合がその統合を図る点で前項の企業組合の場合と類似しております。したがって、選択する場合は、先ず、組合員の意向が重要なポイントであること、組合員事業の一部の共同化のみでは目的が達成できないか否かなど、企業組合の場合と同様のことが言えますね。 次に、事業協同組合が、加入脱退の自由や議決権の平等など、協同組合原則といわれるものによって運営されるのに対し、協業組合は、加入脱退の制限や一定の範囲で出資に応ずる議決権の付与など会社に近い経営ができ、必要により大企業も加入できる組織となっています。そのため協業組合は、資金が集め易く、機動的な運営ができるなどの特色をもっています。このような両組合の相違が、選択上の判断基準になりますが、この相違から、組合を作ろうとする目的や、組合員になろうとする者の事業等の実態に照らし、どちらが適当であるか判断する必要があります。 次に協業組合は、合併型のものだけでなく、組合員の事業の一部の統合でも認められますが、この型の事業統合は事業協同組合でも可能ですので、どちらの組合にするか問題になります。 この場合は、上記の資金確保、運営の機動性などにおける両組合の相違が選択の一つの基準となりますが、それとともに組合員の事業利用状況の見通しが重要なポイントとなります。 すなわち、協業組合の場合は、競業禁止義務によって組合員は統合してしまった事業は原則的に行えないのに対し、事業協同組合の場合は事業の利用は自由であります。この点のみからすれば事業協同組合の事業が不安定になり易い性格をもっていますので、組合員の利用状況如何の見通しが判断の一つのポイントになるわけです。 また、共同化なり協業化する事業が、組合員にとっても、組合にとっても重要な事業であるか否かも判断の基準になります。余り重要でない事業は、あえて協業するほどのことはないと言えるからです。 また、協業組合の場合は、協業した組合事業のみを考えれば良い組織となっており、組合員に残っている事業について、金融事業や教育情報事業などの事業活動ができないことになっていますので、このことも、選択に当って留意する必要があります。 |
企業組合と協業組合 |
両組合とも組合員の事業を統合する点では、同じような組織ですが、運営等については、前項の「事業協同組合と協業組合」で述べた同様に、企業組合が協同組合原則によっているのに対し、協業組合は会社に近い経営ができるなどの相違があります。したがって、前項で述べたように、この相違が先ず選択するに当っての基準になります。 すなわち、協業組合は、企業組合に比べ、資金が集め易く、機動的な経営が行え、企業性が高い特色があり、一方、企業組合は、加入が個人に限られ、組合員に従事義務が課されているなどの特色があります。 このような両組合の組織の相違から、物的施設に多額の資金を必要とする資本装備の高い事業や、機動的な経営が特に必要とされる事業を行う場合は、どちらかというと協業組合が適していると言えます。これに対し、共に働き民主的な経営を行うという観点から、手作業に頼る部分の多い事業や、頭脳的な活動が主体となるような事業を行う場合は、企業組合の方が適していると言えます。 なお、従業員や組合員の後継者を組合員として処遇したいというような場合は、協業組合では認められませんが、このようなことも一つの選択上の留意点と言えましょう。 |
事業協同組合と商店街振興組合 |
両組合とも殆んど同じような事業ができますので、商店街地区に組合を作る場合に迷うことがあります。しかし、商店街振興組合の設立要件は、市の区域であること、小売・サービス業が30店以上近接し商店街を形成していること、その地区に商店街振興組合が設立されていないことなどですから、この要件に合致しない場合は、事業協同組合によらざるを得ないことになります。また、商店街振興組合は、大企業や事業者でない住民なども加入させられますから、このような者を組合員としたい場合は、商店街振興組合によらざるを得ません。 したがって、選択上一番問題になるのは、いずれの組合でも設立できるという場合ですが、これについては、両組合の制度上の相違から、次のようなことが言えましょう。 すなわち、商店街振興組合は、地区が制約され、地区内の居住者すべてを網羅する組織ですから、商店街の整備など商店街全体の発展を図るために適した組織と言えます。したがって商店街全体の発展を主な目的とする場合は、組織制度上、商店街振興組合の方が適していると言えます。反面、商店街振興組合は、小売・サービス業以外の事業者や住民なども加入できますし、また、資格者が多数加入した方が良い組織ですから、同志的な活動が阻害される面があるとともに、中小企業である小売・サービス業者のみを対象とする事業が事業協同組合に比べて円滑さを欠く面があります。したがって、共同経済事業を主とする共同事業によって組合員である中小小売・サービス業等の近代化・合理化を図るというような目的の場合は、制度上、どちらかというと事業協同組合の方が適していると言えましょう。 |