事業協同組合の事業

中小企業者が相互扶助の精神に基づいて協同で事業を行い、経営の近代化・合理化と経済的地位向上を図るための組合で、共同事業は組合員の企業を支援・助成するための事業ならばほとんど全ての分野で実施できます。組合の設立も四人以上集まればよく、気心の合う同じニーズを持った事業者だけで比較的自由に設立できますので、中小企業者にとって非常に利用しやすい組合として広く普及しており、中小企業が設立している代表的な組合です。

また、この組合は、異なる業種の事業者が連携してこの事業協同組合を組織し、各々の組合員が蓄えた技術・経営のノウハウ等の経営資源を合わせて新技術・新製品開発・新事業分野・新市場開拓等をめざすものが増えつつあり、その活動が注目されています。
事業協同組合が実施する共同事業にはいろいろな種類がありますが、比較的多くの組合が実施しているものは次のような事業です。

共同生産・加工事業
組合が、新鋭設備等を導入し、組合員が必要とするものを生産・加工し、組合員に供給する事業です。これによって、原価の引き下げ、規格の統一、品質の向上、設備の効率化などが図られます。
共同購買事業
組合員が必要な資材等を組合がまとめて購入し、組合員に供給する事業です。これによって、仕入先との交渉が強化されるので、仕入れ価格の引き下げ、代金決済条件などの取引条件の改善、購入品の規格・品質の均一化などが図られます。
共同販売事業
組合員が取り扱う製品を組合がまとめて販売する事業です。これによって、販売価格や決済条件が有利になるほか、大口需要先の開拓などの販路の拡張が図られます。
共同受注事業
組合が注文を受け、組合員に仕事をさせ、組合が納品する事業です。また、組合員に注文を斡旋する方法もあります。これによって、大口の発注先の開拓など販路の拡張や取引条件の改善などが図れます。
共同検査事業
組合員の製品、設備、原材料等について、その品質・性能、仕事の完成状況などを検査する事業です。これによって、品質の維持・改善、規格の統一、仕事内容の評価を高めることができます。
市場開拓・販売促進事業
 市場開拓事業は、組合員の製品や取扱い商品などの販路の維持拡張を図るために共同で市場調査や展示会を開催する事業です。また、販売促進事業には、広告・宣伝事業、共同売出し事業、クレジット事業などの事業があります。これらの事業は、個々の企業では採算が合わないとか、品揃えができないなどの理由で実施することが困難な面がありますが共同で行うことによって可能になります。
研究開発事業
 組合が研究施設を設置したり、公的な試験研究機関等に研究を委託するなどして組合員の事業に関する様々なテーマについて研究開発を行う事業です。これによって、製品・技術・意匠・作業方法・販売方法の改善・開発などが図れます。
情報提供事業
 組合員の経営に役立つ需要動向、技術情報、業界情報、経営管理情報等を収集し、組合員に提供する事業です。また組合の共同事業に役立つ情報の収集や組合をPRするための情報を組合員や関係方面へ提供することも組合の情報化事業として大切な分野です。なお、最近では、コンピュータなど情報機器を導入して情報提供を活発に展開している組合も多くみられます。
人材養成事業
組合員をはじめ、その後継者、組合員企業の管理者などを対象に計画的・体系的に教育研修等を行うことによって人材養成する事業です。人材養成は、企業経営の基本をなすものですが、特に最近では、情報力、技術力、マーケティング力等のソフトな経営資源の充実を図る必要から、この事業の重要性が一層高まっています。
金融事業
組合員の事業資金の調達を目的とする事業です。組合が金融機関から資金を借り入れ、これを組合員に貸し出す方法と組合員が金融機関から直接借り入れる際に組合が保証する方法があります。組合と組合員のための金融機関として商工組合中央金庫があります。
債務保証事業
組合員が顧客と仕入先等と取り引きする際に組合がその取引の債務を保証する事業です。これによって、組合員の取引の円滑化と拡大を図ることができます。保証する債務の内容としては、仕入代金の支払保証、商品・製品の品質保証、工事や製品の瑕疵保証等組合員の取引に関する様々な債務を対象とすることができますが、組合は債務保証することによってリスクも伴うので予め保証準備金を組合に積み立て、財政基盤や実施体制等を十分整えてから慎重に取り組むことが大切です。
共同労務管理事業
組合員の従業員の確保、定着あるいは能力の向上等を図るため、組合員が行う労務管理の一部を組合が代わって行う事業です。これによって、時間短縮等の労働条件、安全衛生、福利厚生、作業環境などの改善が図れます。また、従業員の知識・技能等の向上を図るための教育・訓練なども盛んに行われています。
福利厚生事業
組合員の私生活面の利益を増進するための事業で、健康診断、慶弔見舞金の給付、親睦旅行、レクリエーション活動などがあります。この事業は、組合員の融和、組合への参加意識、協調性の高揚等に効果があります。
経営環境の変化に対応する新たな事業

これまで述べた事業は、事業協同組合が行っている主な共同事業とその概要を紹介したものです。組合の共同事業は、これまでも時代の変化に対応して新しいものが生まれています。例えば地球温暖化、廃棄物、フロン等のエネルギー環境問題への対応事業、都市の過密化に対応する集団化事業、OA機器を利用した管理システムの開発、デザイン・商品の研究開発、情報化社会への対応、地域産業おこし等の共同事業です。特に、最近は、それぞれ異なる業種の企業同士が結び付き、互いの技術や経営、マーケティングのノウハウ等を提供しあって新技術・新製品を研究したり、新しい事業分野を開拓する知識融合化及び製造物責任に対応するため製品の安全対策、情報ネットワークの構築等の事業が注目されております。
また、国際化の進展に伴い、外国人研修生の共同受入れ等の事業も実施されています。
今までに述べた以外にも多くの事業がありますが、事業の成果を高めるには、組合員が個々で行うよりも組合でまとまって行う方が一層効果的と考えられる事業を行うことがポイントです。